世界的に長引く感染症の影響で、仕事の形態や業種の変更を余儀なくされた人は少なくありません。それにより収入が減少してしまったというケースも耳にしますが、金額にはどのくらい反映されたのでしょうか?民間企業の平均データから確認しましょう。
●平均給与と給与所得者数で減少となる
国税庁が公表した令和2年分民間給与実態統計調査結果によると、1年間を通じて民間企業に勤めた給与所得者の平均給与(賞与を含む)は433万円で、前年の436万円に比べ0.8%減少したことがわかりました。新型コロナウイルス感染症の影響とも読み取れますが、リーマンショック前後よりは落ち込み幅が小さくなっています(平成20年:430万円 → 平成21年:406万円)。
同様に1年を通じて勤務した給与所得者数は5,245万人と、前年比0.2%の減少となりました。これもリーマンショック後の平成21年には前年比1.8%もの減少が見られており、令和2年分の落ち込み幅は一般的なイメージより小さいかもしれません。とはいえ業績回復に至らない企業も多く、令和3年分でどのような傾向が現れるか、引き続き注視する必要があるでしょう。
●給与に占める税額割合が上昇
令和2年分の1人当たり平均給与を雇用形態別に見ると、正規は前年比1.5%減の496万円、非正規は同0.9%増の176万円でした。正規と非正規の差が詰まった形ですが、その間には依然として2.8倍の差があります。
業種別の上位3つは「電気・ガス・熱供給・水道業」が715万円、「金融業・保険業」が630万円、「情報通信業」が611万円でした。一方で下位3つは「サービス業」が353万円、「農林水産・鉱業」が300万円、「宿泊業・飲食サービス業」が251万円という平均給与の額です。前年比で「情報通信業」が12万円増加、「宿泊業・飲食サービス業」が9万円減少となっていることは、コロナ禍における業種の好不調を示しているかもしれません。
以上のデータから、あくまで全体の平均で考えれば、給与はそれほど下がっていないとも言えます。しかし納税者の給与に占める税額割合は、リーマンショック後の水準から上昇しており(平成21年:4.31% → 令和2年:5.07%)、社会保険の負担も増えていることから、暮らし向きが苦しくなったと実感する人は多いでしょう。物価変動も加味する必要はありますが、実際に受け取れる手取り額の増加こそ、人々が生活を送るうえで真に望まれています。
【参照】国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査について」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/001.pdf