様々な年代の柔軟な働き方が求められる昨今、社会保険の加入要件なども少しずつ変化しています。雇用保険においては65歳以上を対象とした新制度が施行されていますが、加入要件や留意点はどのようなものでしょうか?
●従来の制度と比べ被保険者になれる人の範囲が拡大
令和4年1月から高齢労働者を対象として、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。この制度は複数の事業所に勤務し、そのうち2つの事業所で以下の要件を満たす65歳以上の労働者が、ハローワークに申出を行うことで雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができるものです。
・2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上
・2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上
従来の雇用保険制度では、「主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み」等の適用要件を満たす必要があり、主たる事業所での労働時間が短いようなケースでは被保険者になることができませんでした。
雇用保険は失業時の給付や介護休業給付等により、生活の助けになる局面もあるため、今般の「雇用保険マルチジョブホルダー制度」創設で対象者の範囲が広がるのは朗報かもしれません。なおこの制度でも通常の被保険者と同様、任意脱退はできないため注意が必要です。
●雇用保険料の納付義務も発生
「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の手続きは、対象となる労働者本人が事業主に証明項目の記載(雇用の事実や所定労働時間など)を依頼し、適用を受ける2社の必要書類を揃えてハローワークへ申出を行います。事業主は申出に必要な証明を拒んではならず、申出を理由とする不利益な取り扱いも禁止されています。
労働者本人がハローワークに申出を行った日から被保険者となりますが、それと同時に雇用保険料の納付義務も発生することにも留意が必要です。雇用保険料の順次引き上げが報じられる中、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の利用者がどれほど増えていくのか、その推移も含めて動向が注目されます。
【参照】厚生労働省「【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html