お知らせ
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作成日:2022/05/16
賃金不払残業の実態と原因解消へ向けた取組について



 企業における長時間残業は従業員のモチベーションだけでなく、生産性や健康面にも悪影響を与えます。さらに本来支払われるべき残業代が支払われないケースでは、労働基準監督署(労基署)の指導が入ることもありますが、その実態を厚生労働省の公表結果から見てみましょう。

 

●65,395人の労働者に平均11万円の割増賃金が支払われる

厚生労働省が公表した「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」では、労基署が監督指導を行い、1企業で合計100万円以上の割増賃金を支払った事案が取りまとめられています。是正が行われた企業数や対象労働者数は、以下の通りです。

・是正企業数:1,062企業

・上記のうち1,000万円以上の割増賃金を支払った企業数:112企業

・対象労働者数:65,395人

・支払われた割増賃金合計額:69億8,614万円

・支払われた割増賃金の平均額:1企業あたり658万円/労働者1人あたり11万円

 

令和2年度の結果では是正企業数、対象労働者数、支払われた割増賃金合計額が、過去10年において一番少ない値となりました。その要因は公表結果に記載されていませんが、新型コロナウイルス感染症の影響で経済活動が停滞したこと、テレワーク普及により勤怠管理が難しくなった等の要因も無視できないでしょう。

 

●原因解消の取組事例

監督指導の対象となった企業では、残業代をさかのぼって支払うだけでなく、原因解消へ向けた様々な取組が行われています。その事例を一部紹介します。

 

【事例1 小売業】

「出勤を記録せずに働いている者がいることを、管理者も黙認している」という情報を受け、労基署が企業に立入調査を実施。監視カメラの記録から不払残業が確認されたため、実態調査を行うよう指導。企業は労働時間の実態調査を行い、不払割増賃金を支払った。

さらに原因解消のため、管理者を対象に労働基準監督官を講師とした研修会を実施し、従業員にも会議等を通じて法令順守教育を行った。また、社内コンプライアンス組織の指導員を増員して店舗巡回、抜き打ち調査を行うことにより、勤怠記録との乖離がないか確認することとした。

 

【事例2 プラスチック製品製造業】

「時間外労働が自発的学習とされ、割増賃金が支払われない」という情報を受け、労基署が企業に立入調査を実施。情報を裏付ける材料が散見され、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。企業は労働者からのヒアリングをもとに実態調査を行い、自発的学習と認められない時間について、不払となっていた割増賃金を支払った。 

 さらに原因解消のため、「代表取締役が管理職へ時間外労働の適正な取扱いについて説明」「労働組合と協議」「事業場の責任者による定期的な職場巡視」という対応および体制構築を行った。

 

以上のように前向きな姿勢で改善に臨む企業もあれば、残業代を支払うことで精いっぱいな企業もあるでしょう。未払残業代の時効について以前は2年だったところ、法改正で令和2年4月以降に発生した未払残業代の時効が3年となり、今後は5年に延長されることも見込まれています。

企業にとって過去の残業に関する実態調査や、残業代をさかのぼって支払うことは、多大な労力と費用が発生します。その事態を防ぐためには従業員の労働時間を適切に把握する体制作りと、残業そのものを減らす業務フロー見直しが必須と言えるでしょう。

 

【参照】厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/chingin-c_r02.html

 
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