会社から退職金が支払われるかどうかは従業員だけでなく、経営者や役員にとっても大きな関心事です。中小企業の経営者等が退職金を準備する方法として、小規模企業共済も広く利用されていますが、どのような制度でしょうか?
●退職や廃業の際に共済金が受け取れる
小規模企業共済とは小規模企業の経営者や役員、個人事業主等のための、積立による退職金制度です。国の機関である中小機構が運営しており、令和3年3月末の時点で制度在籍人数は約153万人、資産運用残高は約10兆5,018億円にのぼります。
共済の掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で自由に設定(500円単位)でき、加入後の増額・減額も可能です。共済金は退職・廃業といった請求事由が発生した際に受け取り可能で、満期や満額はありません。共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」から選択し(一部要件あり)、掛金納付月数や請求事由によって金額が変わります。
注意点として掛金納付月数が短期(請求事由によって6か月未満・12か月未満など)の場合、共済金や解約手当金が受け取れません。また掛金納付月数240か月未満での任意解約や、掛金を途中で増額・減額した場合の任意解約では、受け取れる解約手当金が元本割れしてしまうことがあります。
●掛金の全額を所得控除できる
小規模企業共済のメリットの一つして、低金利の貸付制度が挙げられます。貸付は掛金納付月数により掛金の7〜9割で利用でき、目的にしたがって「一般貸付け」「緊急経営安定貸付け」「傷病災害時貸付け」「福祉対応貸付け」「事業承継貸付け」「廃業準備貸付け」などがあります。共済に加入する経営者や役員が、貸付金を喫緊の経営課題などに充当できる点は画期的と言えるでしょう。
税務面では掛金の全額を所得控除でき、共済金を一括で受け取る場合は退職所得、分割で受け取る場合は公的年金等の雑所得となります。
なお加入手続きは、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体や、金融機関の窓口で行います。経営者等の退職金準備として有効な制度ですが、万一の場合の事業保障など、カバーしきれない部分は保険等で補うと良いでしょう。
【参照】中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/