労働者が仕事を続けるためには、身体と心の両面で健康な状態が望まれます。とりわけ近年は職場のメンタルヘルス問題がクローズアップされ、企業側で対応を誤ると大きな批判に晒される可能性もあります。職場において労働者のメンタルヘルス対策をどのように取るべきか、厚生労働省の指針から見てみましょう。
●指針で定められたメンタルヘルスケアの実施方法
厚生労働省では「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を定め、職場におけるメンタルヘルス対策を推進しています。この指針は労働安全衛生法に基づき、労働者の心の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めたものです。
メンタルヘルスケアの実施にあたっては、「心の健康問題の特性」「労働者の個人情報の保護への配慮」「人事労務管理との関係」「家庭・個人生活等の職場以外の問題」といった事項に留意する必要があり、状態に応じて以下の一次予防〜三次予防を行います。
一次予防・・・ストレスチェック制度や、職場環境等の改善を通じて不調を未然に防止
二次予防・・・メンタルヘルス不調の早期発見と適切な措置
三次予防・・・メンタルヘルス不調となった労働者の復帰支援など
職場でのストレス要因には仕事の質・量、責任の発生、セクハラ・パワハラを含む対人関係などがあり、それらが複合的に絡んだケースも存在します。労災や自殺といった深刻な事態を避けるためにも、企業側はしっかりとしたケア体制を整える必要があるでしょう。
●関わる立場によって4つのケアが存在
メンタルヘルスケアは中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要です。また推進にあたっては、事業者が労働者の意見を聞きつつ、事業場の実態に則した取り組みを行わなくてはなりません。
具体的な進め方としては、企業で作成した「心の健康づくり」の方針や計画に沿ってケアを実施します。その際に得られた結果の評価を行い、計画等の見直しにフィードバックしていくことが重要です。メンタルヘルスケアは関わる人の立場によって、次の4つが存在します。
(1)労働者によるセルフケア
(2)ライン(管理監督者)によるケア
(3)事業場内産業保健スタッフ等(産業医、衛生管理者等)によるケア
(4)事業場外資源(機関、専門家)によるケア
いずれの立場でも職場環境がどのような状態にあるか把握し、必要な改善をおこなっていくことが大切です。それに加えて労働者のメンタル不調に、本人を含めていち早く気づくことが、適切な対応の第一歩となります。
現在はコロナ禍によってストレスが溜まりやすいうえ、リモートワーク等で労働者の状況が把握しにくいケースも増えています。メンタルを崩す可能性は誰にでもあるだけに、職場で普段から相談しやすい体制や雰囲気を、いかに作っていくかが心の健康を保つカギになるでしょう。
【参照】職場における心の健康づくり(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf