労働市場活性化やキャリア形成の観点から近年、副業・兼業が注目されています。本業との兼ね合いなど、企業と労働者の間でどのようなルールを整備していくかも大きな課題ですが、その基盤となるガイドラインの概要を確認しましょう。
●直近のガイドライン改定で追加された内容とは?
厚生労働省は副業・兼業について、企業や労働者がどのような事項に留意すべきかをまとめたガイドラインを作成し、順次改定を行っています。直近の改定は令和4年7月で、下記の内容が追加されました。
<企業の対応>
自社のホームページ等で、「副業・兼業を許容しているか否か」「条件付許容の場合はその条件」について公表することが望ましい。そのうち条件付き許容では、自社の業務に支障がない範囲で副業・兼業を認めるといった条件の記載を想定する。
<労働者の対応>
適切な副業・兼業先を選択する観点から、企業のホームページ等で公表される、上記のような情報を参考にすること。
従来のガイドラインでは企業の対応として労働時間管理や健康管理、労働者の対応として勤務先の副業・兼業に関するルール(労働契約、就業規則等)を確認することが記載されていました。今般の改定ではそれに加え、ルールの公表による情報公開を推奨しています。
●労働者・企業の双方にメリットと課題が存在
副業・兼業を上手に活用すれば、労働者の主体的なキャリア形成や所得増加、自己実現の追求につながります。それを許容する企業にとっても人材の流出防止、社外人脈の構築といったメリットが存在します。
その一方で労働者自身による就業時間や健康の管理、秘密保持義務などをどう確保するかが大きな課題です。とりわけ中小企業では十分な管理体制が取れず、副業・兼業を禁止せざるを得ないケースもあるでしょう。
日本においては労働人口の減少による、経済活動の停滞が懸念されています。限られた労働力を活かすためには、各人が能力を最大限に発揮できる環境で働く必要があります。副業・兼業を通して労働者が多様な経験を積み、その都度能力に見合った企業とマッチングしていくことで、経済全体に良い循環が生まれるかもしれません。ガイドラインにしたがって各企業のルールが整備され、モラル遵守と生産性向上の両面で機能することが望まれます。
【参照】厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html